流れ星
ああ、神様お願い。
今回だけ、願い叶えて。
あ!流れ星。
お願い、お願い。あの人が優しく笑ってくれますように!
流れ星、お願い。
神様、お願い。
私は、勉強よりもクディッチの方が得意なのに、なぜか
レイブンクロー生。五年生になって、寮代表にもなれて嬉しくて浮かれていたら
授業中に鍋をひっくり返して、たまたま近くにいた男の子に薬品をかけてしまった。
今日に限って、合同授業でしかもグリフィンドールと一緒だった。
私が薬品をかけちゃったのは、女子の憧れの的、悪戯仕掛け人のリーマス・J・ルーピンだった。
ああ……っ神様、ひどい。
鳶色の頭から、薬品をもろにかぶってローブまでぐちゃぐちゃ。私は謝って慌てて、杖で水分を
はらって乾かした。
「大丈夫だよ」
にっこり笑うルーピンの笑顔が、みんな魅力的って言うけれど、今の私には惡魔の微笑にしか見えなかった。
だって、ほらなんだか、怒ってるみたいだし。
「これは、今度のレポートで償ってもらわないとなぁ」
そんな普通の女の子だったら、失神しそうなルーピンスマイルを私に向けないで!
そんなの「大丈夫だよ」って言っている人の台詞じゃないし。
「僕ね、魔法薬学苦手なんだ。ね、よろしくね」
今度提出のレポートを写させればいいのかと、思っていたらそれは違って、放課後にルーピンに
魔法薬学を教えないとダメだって言われた。
写したって勉強にならないって、笑顔で正論言われたけれど、笑顔の裏側の黒さに気づいた
私には胡散臭い笑顔でしかない。
おかしいな、私もルーピン、カッコイイなって思ってたんだけど。
あれれ……?
ルーピンは飲み込みが早くて、私はそんなに説明しないでもすぐに理解してくれる。
こんなにできるなら、自分でレポート書けるんじゃないかなって私は思った。
「なに言ってるのさ。口実に決まってるでしょ。……二人っきりになるための」
にや、と何か企む笑顔を私に向けて、ルーピンは羽ペンを図書室のテーブルに転がして
隣に座る私に顔を近づけた。
頬がぬれた音を立てて、やわらかい感触に私は、何が起きたのかすぐに理解して口を
ぱくぱくさせて、頬を染め上げた。
「こんな役得でもないとね」
さらに接近してこようとするルーピンに私は、悲鳴を上げて彼から離れようとした。
「そんな、ほら、リーマスって呼んで。……それに、逃げると余計に追いかけたくなる」
ますます意味深な、笑顔を見せて私を呪縛する。
そんな笑顔もカッコイイだなんて、ちょっぴり思った私も相当、彼にやられてる。
ああ、神様、お願い。
こんな彼、嫌いじゃないけれど。
でもね、でもね。
優しい笑顔もちょっとみたいの。
お願い、流れ星!
お願い、神様!