僕はいつ頃大人になるんだろう。
僕たちは、どうして大人になるんだろう……。
「ね、ここ、いいかな?」
ホグワーツへ向かう電車の中で空いているコンパートメントを探していたであろう少年が、自分の体よりも大きな荷物を抱えて、たった一人だけ座席に座っている少女のコンパートメントの扉を開けて尋ねた。
癖のない黒髪がすこしぼさぼさで、メガネをかけている少年だった。ちらり、と少年のほうに視線を向けた透き通るように白い肌を持っている少女が静かに頷いた。彼女も少年と同じような黒い色の髪で、腰の辺りまでまっすぐに伸びていた。
「おーい、いいって、こっちこいよ」
コンパートメントからあぶれていたのは、この少年だけではないようで扉から顔だけ通路に出して仲間に呼びかけた。メガネをかけた少年は、コンパートメントの扉を閉めて荷物を荷棚に上げると、少女の向かい側に座った。
「僕、ジェームズ・ポッターっていうんだ。君は?」
「私は、・」
少年と少女はお互いに右手を差し出して、相手の手を握った。ばたばたと、通路を数人が駆け抜ける足音が聞こえて、達のいるコンパートメントの扉が勢い良く開かれた。三人の少年がひょっこりと扉から顔をだしている。
「お、先客がいたのか。悪いな」
三人の中では、一番背の高い少年が気さくな笑顔を見せてコンパートメントの中に入ってきた。それに続くように、鳶色の髪色の少年とひどく緊張した表情をしている少年が入ってきた。
「僕たち座る席がないんだ。よければ一緒にいいかな?」
ジェームズ・ポッターと名乗った少年が、遠慮がちにに尋ねた。友人たちまで呼んでおいて、断れる人はそういないだろう。はあっけにとられてジェームズたちを見回してから頷いた。
「よろしく。私ね、・」
が太陽の日差しのような笑顔をみせると、口々に少年達は名前を名乗り上げた。一番背が高いのは、シリウス・ブラック。鳶色の髪の少年はリーマス・J・ルーピン。緊張した表情をしているのはピータ・ペティグリューであった。リーマスはちゃっかりと、の隣に座り嬉しそうにに話しかける。
「僕たち今年入学なんだ。は?」
「私も同じ。一年生」
どうやら、全員同じ学年のようでこれから通うホグワーツ魔法学校に対して期待に胸が膨らんだ。
ホグワーツ魔法学校の大広間に通されると、上級生達がすでにテーブルに着き新入生の帽子の組み分けのために待機している。上級生達の期待と好奇心に満ちた視線に晒されながら、新入生たちは小さい体を緊張させて広間の中央を歩いた。
名前が順番に呼ばれて、帽子が歌にあわせてそれぞれの寮の名前を叫んでいる。
・は自分の組み分けがまだだったので、緊張した表情で組み分けの様子をみている。コンパートメントで一緒だった男の子達は全員、グリフィンドール寮に分けられていた。
同じだったら良いなとは思うが、両親も、祖父母も「スリザリン寮」に組み分けされているので統計的にはスリザリンに分けられるはずだ。
名前を呼ばれて、は緊張のあまり声が裏返りながらも返事をして立ち上がった。前に出て椅子に座り、組み分け帽子をかぶる。
『ふむ。これまた面白い血筋のものが入ってきたな』
帽子がの頭の中に話しかけた。
『代々この学校に来てるから』
『ふむ。だけど君は彼らとは違う……! そうだな……』
帽子は、人間で言うなら深く息を吸い込んだというべきなのか少し間をおいて広間中に聞こえる大声で彼女の寮を宣言した。
「グリフィンドール!!」
こうして、彼女の波乱に満ちたホグワーツ生活が始まった。